そこら辺がたまらない(土銀)




預かるって、それって貴方の私物がこの家に増えたってことですか?



「…クッション?」

「ん?」
いきなりたずねて来て、寝転がった土方の頭の下に大きいフワフワのクッションがひとつ。
どうやらオフらしい。
すぐ寝そうになった彼に、そこだけ突っ込みを入れてみた。
すると、少し眠そうに起き上がった土方はクッションを手に笑う。
「ああ…だって枕になりそうなもん無いから、マイクッション…」
「無いからって、おい、ここはホテルじゃないぞ」
「だって、総悟が邪魔して寝られねぇから…お前のところしかない」
そう言ってまた寝転がる。
目を瞑ってクッションに顔を埋めた土方に銀時は流石にムッとする。
「…あ〜?何を生意気な事を言ってんだ!起きなさい!トシ君!!!」
「…煩い、お前も寝てろ」
「うわっ」
土方を起こそうと彼の肩に手を掛けていたそれを引かれ、その上に倒れこむ。
抱き込まれる形で収まった銀時の背中を優しく二回叩いてため息をつく土方。
銀時は憮然としたまま取り敢えず不自然な体勢を整えた。
「…狭い」
「いいだろ、嬉しいなあ銀時と密着〜…」
「なんかお前らしくないねその言いか…」
言い方が間延びしているのに気付いて覗き込んだ銀時だったが、土方は既に寝息を立てていた。
そういえば、きたときから既に寝ぼけ眼だったような気がした。
相当眠かったのだろう。
しかし、まさかココまでくるとは。
沖田は相当苛めているのだろう。
それとも構って欲しいだけか?
なんにせよ、彼は眠いらしい。
それを無碍にすることなど出来ない。
「…まあ、寝るといいさ」
「…銀時…」
「…寝言かおい…」
腰に手をまわしたまま意外にがっしりと掴まれている。
動けそうも無い。
銀時は暫らく土方の胸に頭を置く。
心臓の音が規則正しく耳を打つ。

なんだか、穏やかな空間。
土方の手は温かい。

「…あ、やば、眠い…」
銀時はそう言って、土方の心音に誘われるように眠りについたのだった。


★★★

「…っ…だいま〜…あれ?銀さん?退君、銀さんそこらへんに居ない?」
「…君…八君、やばいよ、なんか面白いことになってる」
「…来ても良かったのかな?」
「しーらない、ああ、でも副長幸せそう…てゆか寝顔初めて見るよ」
「え?」
「副長、人前でなかなか寝ないんだ。こんなに爆睡しているの初めて見る、なんか坂田さんには命預けてるみたいに見える…いいなあ…羨ましい」


「…ん?…うるせぇな…」

「あ、すいません、起きてしまいましたか?銀さん、はい」
「ん…?ども…」
首の後ろを掻きつつ起き上がった銀時に新八がコップに入れたイチゴ牛乳を差し出す。
それを受け取って飲みながら、自分の下に居る人間を見て微笑んだ。
まだ寝息を立てている土方は起きる気配すらない。
まるで、傍に銀時が居ることに安心しているようだった。
「…なんか、邪魔ですか?」
新八がそう銀時に質問している最中に、山崎は既に玄関に向かい始める。
恐らくもう答えがわかっているのだろう彼は、自分が土方の寝顔を見なかったことにするのだろう。
こういう弱いところを見られる事を土方が酷く嫌がるのがわかっているから。
銀時は、答えが出しやすい状況に感謝しながら、頷いた。
「ああ、邪魔」
「もう、はっきりだなあ…」
テーブルにイチゴ牛乳入っていた空コップを置いて、銀時は新八の頭を撫でた。
「いっから、もう少し、コイツに寝ていて欲しいもんでな」
「…はい」
物分かりのいい彼は銀時に笑いかけてから、山崎の後をついて外に出て行く。
見送ってから、銀時は静かになった家の中で、寝息を聞いた。
その主を見下ろして、銀時は微笑む。
「ほう、土方君は、俺に命を預けてるんだ」
「…ん…」
「あ?煩い?」
「…銀…とき…」


幸せそうに寝ている。
人前じゃなかなか寝ない。


嬉しい情報を有難うよ、山崎。


「…多串君、十四郎君、トシ君、土方君」
「…」

取り敢えず、呼んでみるだけ呼んで、それでも起きない彼に笑う。
相当、安心しきっているんだと。


それは、惚れた冥利に尽きるよ。


その瞑られた目が、次、開く時は、一番初めに俺が視界に入るんだな?


綺麗な顔。


「…キスしてしまいますか」

そう呟いて、銀時は土方の額にキスをする。
そのあと、頬と、唇に。

触れるだけの優しいキスをして、やったことに気恥ずかしさを覚える。
頬が赤いだろうとそこを触ってから。銀時は目を細めた。

「甘いね〜…」

すっごい甘い気分だ。

甘いから。

美味しく頂いてしまうぞ、この気分。





また、土方の胸に頬をつけた銀時は目を瞑る。

「…おやすみ」

小さな言葉を、部屋が静かに吸い込んだ。



俺も安心している。



この安心感は、お前以外、多分誰にも与えることはできないよ。


★★★
「?」
目が覚めると、クッションのみ。
身体を起こすと、土方はキッチンに居た。
冷蔵庫から取ってきたのはイチゴ牛乳。
飲みながら歩いてくる彼に、銀時はもうひとつの手に持たれたコップを受け取った。
「甘ったるいな、寝起きには悪くねーけど」
「だろ?カルシウムを取っておけば大丈夫なんだよ」
「意味わかんねぇよ、あ〜よく寝た」
「もう、昼過ぎた、な、何か食いにいかね?」
「…そうだな」
銀時の肩に手を置いて、土方は欠伸をする。
その彼の少しの寝癖に気付いて笑うと、銀時はクッションを手に取った。
「これ、どうするんだ?」
「預ける、ココに来たときはそれ必須」
「あのな、ココは寝る場所…でもいっか…」
「…は?何その気味悪い譲歩」
「…たまには、それもいいじゃない」
「…」
クッションを抱き締めている銀時を見下ろして、土方はその肩を抱いた。
引き寄せたまま、土方は暫らくして、銀時の額にキスをした。
「お前、俺が寝ているときキスした?」
「なんで?」
「口、イチゴ味したから」
そう言われて、銀時の頬が少し赤くなる。
そっぽを向いて、暫らく黙ってから頷いて、呟いた。
「…かもね」
「そっか…全然気付かなかった」
「大丈夫、気付かなくても俺が気付いているから」
「…」
そ知らぬ振りでそう言って。
土方がその後、嬉しそうに微笑むのを感じた。
頭を撫でられて、銀時は照れ隠しにその腕を思い切り掴む。
「昼飯!昼飯!」
「はいはい…」
銀時に促されて立ち上がる土方。
思った以上に安心しきった自分を感じ、隣に立った銀時を見た。
「?」
「ちょっと、いいか?」
そう言って彼の唇に自分のそれを重ねて。
黙ってそれを受け入れた彼に、少しだけ深いキスをして離す。


甘い気分。

そう思って彼から離れると土方は少し乱れた髪と着物を正した。
「…よし、と行くぞ」
「甘味処ね、絶対」
「ああ、わかった」


歩き出して、少しして、二人は、同時に大きな欠伸をした。


笑いに繋がる3秒くらい前の出来事。





その後、クッションは銀時の部屋に保管される。
そして、土方が来る時のみ引っ張り出されるのだった。






END




題名と内容が掠ってないけど、こういう二人がたまらないって言う私の感情(知るか)

てゆうか、土方さんが寝ていると絶対的超絶的に可愛いと思っているので。多分寝るネタは一杯出てきます。
銀ちゃんと一緒にいるのが何より安心。

それ以外なら絶対、近藤さんで。
近藤さんだったら、トシ絶対寝ますね、絶対にね。もうポッフリとねますよ(ポッフリかよ)

でもでも、銀ちゃんとの時間には緊張も何もないんです、ラブラ…(煩い!)